先日WOWOWでアメリカ映画「オッペンハイマー」が放映された。
    その映画を見て思いだし本棚を探して見つけたのが下の本である。

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「0の暁(ゼロのあかつき)」
     
     左  角川文庫  昭和38年発行 
     右  創元文庫  昭和28年発行 


 
     この本は原子爆弾の開発=マンハッタン計画に参加した唯一のジャーナリストが
     その一部始終を記した本である。しかもいっさい小難しい数式などは用いていない。

     「0の暁(ゼロのあかつき)」とは人類史上初めて原子爆弾の爆発実験をした地点が
     砂漠内の0ポイントと呼ばれたことから来ている。

     1938年にドイツのオットーとシュトラスマンという二人の科学者がウランの原子核に
     中性子をぶつけるとほぼ同じ質量の2つの他の原子核に分かれる事=核分裂を発見した。

     当時アインシュタインの発表した理論からE=mc²という式が知られていた。
     Eはエネルギー、mは質量、cは光速で、この式はエネルギーと質量は同じ物=等価
     であるということを表している。
 
     では核分裂は何を意味するのか。

     核分裂前の最初の原子核=ウラン原子核の質量と分裂後の2つの原子核の質量の和は
     同じにはならず、分裂後の2つの原子核の質量の和が小さくなる,つまり分裂後に質量が
     減ってしまうのである(質量欠損と言う)。
     
       この核分裂で減少してしまった質量はどうなるのかと言うとこれがエネルギーになると    
     いうのである。
       しかもE=mc²からその時に放出されるエネルギーは膨大な量になる。
 
     核分裂によって得られるエネルギーを利用した兵器が開発されたなら
     人類史上最強の兵器になる。
     こんな事から  E=mc² と言う式は”悪魔の方程式”と呼ばれたりした。

     核分裂発見の翌年1939年にドイツ・ナチスがポーランドへ侵攻し第2次世界大戦が
     始まった。
     もしナチスが原子爆弾を開発したならという焦り・恐怖を感じた科学者たち
     (アインシュタインもその中の一人)の進言からアメリカで原子爆弾開発
     =マンハッタン計画が始まった。
     このときマンハッタン計画のリーダーとなったのが物理学者オッペンハイマーである。
     
     そのマンハッタン計画の全貌を記録した本が
「0の暁(ゼロのあかつき)」である。


     原爆に対する日本人の感情から考えればこの本は受け入れがたいかもしれないが、
     原爆だけでなく原子炉などについても非常にわかりやすく記述されており
     名著と思っている。



             おわり