きっかけはX線の発見から・・・蛇足! 

    


     

     原爆とか原発などはいつからどのようにしてはじまったのであろうか。
     その出発点を簡単に記してみたい。

     1800年代になると電気の実験が盛んになりモーターや発電機の原理などがイギリスの     
     ファラディーなどによって明らかにされていった。

     1895年にドイツの物理学者レントゲンは放電の実験をしていて近くにある蛍光板や
     写真乾板を感光させる未知の放射線=X線を発見した。
     これによって第1回のノーベル物理学賞を受賞している。
     だいぶ後になってこのX線は波長の短い電磁波であることがわかった。

     真空中で高電圧の-極から+極に向けて電子が飛び出す現象が放電である。
     この放電の時に高速になった電子が+極に衝突し電子が持っていた運動エネルギーを失う。   
     この電子の失った運動エネルギーが電磁波=X線になっていた。

     X線は 〈目に見えない未知の放射線が存在する〉 という大発見であった。
     もしかすると他にも未知の放射線を出している物があるかもしれないと考えるのは
     自然の成り行きである。

     フランスの物理学者 アンリ・ベクレルは蛍光物質の研究をしていた。
     ご存じのように蛍光物質は光を照射した後に自ら発光する物質である。
     そこでベクレルはもしかすると蛍光物質は発光するときに未知の放射線を出しているかも
     しれないと考えた。

     1896年 に研究対象であった蛍光物質の1つが放射線を出していることを発見した。
     その時に使用した蛍光物質がウランであった。
     ウランはこのときから現在まで善し悪しはともかく人類にとって重要な物質となった。

     ウランは以前より蛍光物質として知られていた。ウランに紫外線などを当てると非常に
     鮮やかな緑色に発光する。
     またラジウムは結構長期間にわたり蛍光物質として時計などの針や文字盤の
     数字などに塗られていた。だいぶ後に放射線障害が明らかになり使用は禁止された。

     1898年にフランスのキュリー夫人がウランより強い放射線を出していたラジウムを
     発見する。

     そして当時の物理学者はキュリー夫人からラジウムなどを分けてもらい放射線の研究を
     している。
     あるときベクレルはキュリー夫人から譲り受けたラジウムを胸のポケットに入れて
     持ち歩いていたところ胸の皮膚が火傷のような痕ができた事をキュリー夫人に報告した。
     キュリー夫人もラジウムを腕に乗せて実験して同じ現象が生じる事を確認したそうである。
     今でいうところの放射線障害で当時はウランやラジウムなどから出る放射線が人体に与える     
     影響などはわかっていなかった。
     結局ベクレルやキュリー夫人は長年にわたる放射性物質の取り扱いによって被爆し健康を
     害して亡くなった。

     同じ1898年、 イギリスの物理学者ラザフォードによりウランなどから出ている放射線   
     はX線とは異なるものであることがわかり後にα線、β線、γ線と名付けられその正体も
     明らかになった。
          またラザフォードは原子核の存在も証明した。
     これによって原子は中心に原子核がありその周りを電子が回っているという原子構造が明ら    
     かになった。

     こうして放射線は原子核から放出されること、また原子核から放射線が出ると原子核が
     他の原子核に変わってしまう(壊 変と言い、α壊 変とかβ壊 変と言う)ことがわかった。
     更に原子核にα線や中性子などをぶつけると原子核に吸収され自然界には存在しなかった
     他の原子核ができることもわかった。
     原子は未来永劫不変と思われていたことが覆ったのである。

     その後イタリアの物理学者エンリコ・フェルミはウランに中性子をぶつけると他の原子核が     
     できることを発見。
     フェルミはノーベル賞を受賞するが授賞式後会場から直行でアメリカに亡命する。
     その後マンハッタン計画に参加し世界初の原子炉を完成させた。

     フェルミの発見後、中性子をウランの原子核に衝突させる実験が繰り返された。
     1938年にウランに中性子をぶつけると2個の他の原子核に分かれること、
     すなわち核分裂が発見されて原子爆弾の開発につながっていった。

     こうして我々がお世話になっているレントゲン撮影であるが、それに使われているX線の
     発見がきっかけとなり50年後には原子爆弾の完成へと続くのである。
     戦時中ということもあり原子爆弾の完成は核分裂の発見からわずか7年後のことであった。


                                    おわり








0の暁(ゼロのあかつき)






         
    先日WOWOWでアメリカ映画「オッペンハイマー」が放映された。
    その映画を見て思いだし本棚を探して見つけたのが下の本である。

IMG_1220[1]


     
「0の暁(ゼロのあかつき)」
     
     左  角川文庫  昭和38年発行 
     右  創元文庫  昭和28年発行 


 
     この本は原子爆弾の開発=マンハッタン計画に参加した唯一のジャーナリストが
     その一部始終を記した本である。しかもいっさい小難しい数式などは用いていない。

     「0の暁(ゼロのあかつき)」とは人類史上初めて原子爆弾の爆発実験をした地点が
     砂漠内の0ポイントと呼ばれたことから来ている。

     1938年にドイツのオットーとシュトラスマンという二人の科学者がウランの原子核に
     中性子をぶつけるとほぼ同じ質量の2つの他の原子核に分かれる事=核分裂を発見した。

     当時アインシュタインの発表した理論からE=mc²という式が知られていた。
     Eはエネルギー、mは質量、cは光速で、この式はエネルギーと質量は同じ物=等価
     であるということを表している。
 
     では核分裂は何を意味するのか。

     核分裂前の最初の原子核=ウラン原子核の質量と分裂後の2つの原子核の質量の和は
     同じにはならず、分裂後の2つの原子核の質量の和が小さくなる,つまり分裂後に質量が
     減ってしまうのである(質量欠損と言う)。
     
       この核分裂で減少してしまった質量はどうなるのかと言うとこれがエネルギーになると    
     いうのである。
       しかもE=mc²からその時に放出されるエネルギーは膨大な量になる。
 
     核分裂によって得られるエネルギーを利用した兵器が開発されたなら
     人類史上最強の兵器になる。
     こんな事から  E=mc² と言う式は”悪魔の方程式”と呼ばれたりした。

     核分裂発見の翌年1939年にドイツ・ナチスがポーランドへ侵攻し第2次世界大戦が
     始まった。
     もしナチスが原子爆弾を開発したならという焦り・恐怖を感じた科学者たち
     (アインシュタインもその中の一人)の進言からアメリカで原子爆弾開発
     =マンハッタン計画が始まった。
     このときマンハッタン計画のリーダーとなったのが物理学者オッペンハイマーである。
     
     そのマンハッタン計画の全貌を記録した本が
「0の暁(ゼロのあかつき)」である。


     原爆に対する日本人の感情から考えればこの本は受け入れがたいかもしれないが、
     原爆だけでなく原子炉などについても非常にわかりやすく記述されており
     名著と思っている。



             おわり





    


99 A2134シングル・アンプの製作





   当ブログ96で行ったMT管の試聴で気に入った7ピン・MT管:A2134と
   サンスイのシングル用出力トランスHS5を用いたアンプを製作した。

   回路は「真空管A2134」で検索して前段に6AK5を用いた回路のコピー。
   今回も前段の6AK5の代わりに同等管のWE403Bを使用している。

   完成後の残留ノイズが0.6~0.7mVだったのでトランジスターを用いた
   リップルフィルターを追加し最終的には残留ノイズは0.3mVになった。
   このため能率の良いスピーカーでもほぼノイズのないアンプに仕上がった。

   出力段は三極管結合・UL・五極管結合の切り替えができるようにしてあり三通りの音の
   変化ができる。
   またこの切り替えの際にノイズが出るのを避けるための簡単なミューティング回路を
   追加したが、完成後の切り替えの際のノイズはごく小さいのでミューティング回路は
   省いても問題なさそうであった。

   1 主な使用部品
      
        真空管   : A2134   WE403B
           出力トランス: サンスイ・HS5
        電源トランス: ゼネラルトランス・PMC-130M
           チョークコイル: LUX4605
           整流素子  : SiC SBD(シリコンカーバイドSBD)
           シャーシー : ゼネラルトランス・ W:250, D:160mm
                            
   2 ミューティング回路は下記の簡単なものである。       
SP切り替えスイッチ_No2
   3 シャーシーの選定

        部品配置をしてみてシャーシーのおおよその大きさを決めシャーシーを選定。
        部品配置から図面を描きそれに基づいてシャーシーの穴開けを行う。

1


   4 完成

      (1)シャーシー上面

2

    (2)シャーシー裏面

7


      (3)三極管結合・UL・五極管結合の切り替え部分

4


    (4)外観・・前面と後面

5
6


   5 おおよその音

            ・ 三極管結合・・出力は1W弱

          NFBをOFF・・音の粒立ちが良く彫りの深い音で奥行き感もある。
                                    全体になめらかで落ち着いた音である。
                   長く聴いていても疲れない。
                     このアンプではこの時が当方の好みである。              

          NFBをON・・・周波数特性がワイドになるがその代わり
                   奥行き感がなく音場が平板になり躍動感が失われる。                 
                 

             ・UL接続・・・NFBはON・ワイドレンジで力強い音、ジャズやポップス向きか。
                     決して悪い音ではないが三結・無帰還の音と比べると
                     荒い感じがする。

              ・五極管結合・・出力は約3W強
                  NFBはON・ワイドレンジでバランスも良い。
                                UL接続以上に歯切れ良く力強い音になる。
                                ただ私的にはクラシックの場合にうるさく感じて落ち着かない。       
                           
   6 最後に

        過去に製作した五極管を用いたシングルアンプのほとんどは3極管結合で無帰還であった。
        今回はしばらくぶりに五極管結合で聴いてみたがやはり当方の好みではないことを
      再確認した。
   
      クラシックに限定すれば直熱三極管のシングルアンプか五極管を用いたアンプであれば      
      三極管結合で無帰還が当方の好みの音である。
   
      ただ、ジャズやポップスを聴く時は五極管結合の場合の方が周波数レンジが広くメリハリ    
      があって聞き映えがする。
    
      高価な直熱三極管に大型のOPTを用いた重量級アンプはほぼ良い音になろう。
        しかし、1本が1300円程度の7ピンのMT管でも結構良い音が楽しめる。
        ただし、OPTの選択は十分に吟味する必要がある。
      当方は三極管結合・無帰還の時に十分楽しめる音のする最小のOPTは今回使用の
      サンスイHS5であった。

       以上はすべて当方の主観による・・・・話し半分程度に!




                 おわり





  

       

98 OPT交換式の話





   


   1 はじめに

     前回にOPT交換式のテストを行ったが今回は改めてOPT交換式について記しておく。
     なお、当方の使用アンプはほとんどがシングルアンプ・無帰還なので当然以下の内容はすべて     
     シングルアンプ用のOPTについての話である。

     一般に真空管を使ったアンプにはOPTが使われる
          (OPTを使用しないOTLアンプもあるが)。
     更にはOPTは真空管を除いた部品の中では最も高価な部品になる場合が多い。
     またこのOPTが変わればアンプを替えたと同じ位に音が変化する事のある重要な部品
     である。

     アンプを製作すればそれに見合ったOPTを必ず組み込むことになる。
     アンプを3台作ればOPTも3組必要になる。
     しかし最近はOPTの価格が結構値上がりしている。
     特にタンゴやタムラの旧型のOPTになると大変高騰してしまった。
     アンプを作るごとに高価なOPTを組み込むことは経済的な負担が大きすぎる。

     そんなこともあって当方は原則としてアンプにはOPTを組み込まないで外付けに
     することにした。
     更には手持ちのOPTがどのアンプでも使えるようにした。OPT交換式である。

     これによって各アンプに最適(?)なOPTが選択できるようになり(OPTの
     一次側インピーダンスの最適値は無視!・・・といい加減ではある)、おまけに
     大型のOPTなどをアンプに組み込まなくて良いのでアンプ本体の重さが極めて
     軽くなる利点もある。

     欠点はアンプの外観がOPTがないことにより寂しくなる。つまり見栄えが良くない。
     当初はアンプを作るときは音質もさることながら見た目にも(他人の目も)留意したが、
     現在は自分自身の楽しみのためにアンプを作るのであって見栄えは気にしないことにした。

   2 所有しているOPT交換式の例・・・すべてシングルアンプ用

 
PA220013-1


   3 交換式OPTの内容

      (1) 使用シャーシ 

       大部分のシャーシーは TAKACHIのYMシリーズ でアルミ板の厚さは1mm。
       大型のOPTでは一部にゼネラルトランス製のアンプ用シャーシー(厚み2mm)
       を用いた。

       TAKACHIのシャーシーに重いOPTを取り付ける場合は次のように取っ手と
       OPTの取り付け部分に
厚さ1.5mmのアルミ製のアングルを補強材として用いた。
       これで強度は十分である。


PA220015-1
PA220015-2


   (2) 使用コード
           
          アンプとOPT間に使用のコードはVCTE・スーパーフレックス(4芯)を用いたが現在であれば
 
              倉茂電工VCT 222 【0.75sq】(600V)柔軟性
              協和ハーモネット:スリムロボットケーブル KRT AWG28 6芯 あたりか?

              芯線の数はできれば6芯で耐圧は500V以上のコードを用いたい。
                 各芯線の役割
                       芯線1:+B、  芯線2:SG(端子があれば)、 
                       芯線3:P(プレート)、芯線4:OPT2次の0, 
                       芯線5はNF用(16Ωなどから)、芯線6:予備
                   
             オヤイデ電機さんで親切に相談にのっていただき購入した。
          
             コードの長さは約60~70cm位で使用している。
          

      (3) コネクター類

              アンプ側には4Pのサトーパーツ製のコネクター(アンプ本体側はメス。
        コード側はオスを使用)を用いたが現在は廃番のようなので替わりの適当な          
        物を選択するしかない。
              当方がメインで使用しているアンプではアンプ側に4Pの
        キャノンコネクターを用いている。

             OPTの一次側には5Pのメタルコンセント(コード側にメス、
        OPT本体側にはオスを使用)を用いているが、

              前述のように6芯のコードを用いるときはすべて6P以上のコネクター類になる。
         
        アンプとOPT間の接続コードは1~2本あれば間に合うが、アンプ本体側        
        やOPT本体側に用いるコネクター類はその数だけ必要になるので入手の          
        しやすい物が良い。
            
PA220018
            


   (4) OPT2次側のインピーダンスの切り替え

       OPT2次側のインピーダンスは使用スピーカーが決まっていれば4Ωなり8Ωなどに固定し    
       ても良いが、見かけ上の1次インピーダンスを変化させるために2次側の
       インピーダンスをスイッチで選択できるようにしておいた方が便利である。
            
       4Ω・8Ω・16Ωのいずれかが選択できる場合は下記のスイッチを用いた。
                  NKKスイッチズ(日本開閉器)
                   基本レバー形トグルスイッチ S-2040
                配線は下記のようになる
            
            
SP切り替えスイッチ_000033

   
     4 簡単なOPT交換の体験を!

      シングルアンプがあれば(できれば三極管か三結アンプが良い)OPTの
      BとP端子に接続されている線を外し外部に線を延長して他のOPTの
      BとP端子に接続(半田付けかワニ口クリップで)する。
      誤配線やショートのないことを確認しOPTの2次側に
      スピーカーを接続して音を聞いてみる。(NFは無視)
      以上は自己責任で。
            

    5 最後に

      OPTを替えると当然音は変わるが、
       一方、OPTを特定の機種に固定して、球やコンデンサーなどの部品を変えたり、
       回路や電圧などを調整してより良い音のアンプに仕上げていくのも楽しいものである。

      したがって以上のOPT交換式は当方の楽しみ方であって、アンプに関する数ある
      楽しみ方の一例にすぎない。   
      楽しみ方は人それぞれなので、自分なりの好みで楽しむのが一番である。

    6 普通はあり得ない・・・といった例!。

      6BM8三結シングル・無帰還アンプにパートリッジの大型OPTを使ってみた。
      図らずも球もOPTも英国製となってしまった。


PA270004

      これが6BM8の音?・・・6BM8って本当は凄い球! ってなったかも。
      好みは各人各様、音もしかり、個人的にはこのOPTをちょっと外せなくなっている。

  さてこれが最後、
   
    新 忠篤 氏がある雑誌にOPT交換式のアイデアをアンプ製作記事の中で発表されていた。
    それを見てパクリ、上記のように適当に(いつものこと)拡大し楽しんだ次第である。


                                          以上 終わり



















    

97 A2134シングルアンプによる各種OPTの試聴





   1 はじめに

     どんなアンプでもOPTを替えれば音は変化する。
       しかし製作後にOPTを交換するのはOPTのサイズや時にはコストの制約などが
     あって困難である。
   
     こんなこともあって6BM8や6BQ5のようなMT出力管のシングルアンプの製作例を
     見るとほとんど小型のOPTが使われていて、大型のOPTに交換し使用してみたと
     いう話はあまり聞かない。
    
       そこで今回はOPT交換式の利点をいかしていろいろなOPTの音を聴いてみた。
    
   2 使用アンプと周波数特性の測定

     使用したアンプは前回MT出力管の試聴で気に入ったA2134シングルアンプ。     
     前段はWE403Aで出力管A2134は三極管結合で無帰還である。
       出力はせいぜい1W程度。
    
     周波数特性の測定には古めのiPadとアプリe-scope 3-in-1 を使用。
     (アプリe-scope 3-in-1 の使用法は当ブログ60を参照)  
  
 
P7310007
     
   3 試聴したOPT
          
P7310016

            下段・左から ①  春日 KA-54B57T 
                        ② タンゴ H-5S
                        ③ ラックス SS5B2.5 (見かけ上5kΩとして使用)
                        ④ サンスイ HS5

          上段・左から   ⑤ タンゴ XE-20S
                          ⑥ タムラ F-2007C

   4 試聴感想
   
        (1) 春日 KA-54B57T

1 春日KA-54B57T

                 周波数特性を見ると特に大きな問題はなさそうであるが実際に音を聞いてみると
           そうも言えない。
           中高域は良いが低域は出ない。
                 音場が狭く音が固まり・団子状である。
                 コアが小さいうえに無帰還なのでやむを得ないかも。
            ほとんどの使用例ではNFをかけている。
            基本的にはNFをかけることにより好結果が得られるのであろう。
                 春日・KA-3250も試聴してみたが同じ印象であった。
                 上記のOPTは小型出力管に良く使われるが無帰還では下記のOPT類とは結構
            大きな差がある。
            
         (2) タンゴ H-5S
 
2 タンゴ H-5S
    
                 春日に比べると明らかに1ランク以上の音である(高価なのであたりまえか!)。  
                 全体的に低域から高域にかけてバランスが良好で音は明るめである。
                 特に不満なく使用できそうであるが、あまり特徴のない音でラックスやサンスイの
             OPTを聴くと何となく物足りなさを感じる。
            
         (3) ラックス:SS5B2.5 
 
3 ラックスSS5B2.5
     
                 中高域は明るく伸びやか。特に高域は十分に伸びて繊細である。
                 それに対して低域は少し弱いのが残念。
                 バスブーストするなど一工夫したい。
                 しかし全体的には良い音で十分に楽しめるOPTである。

          (4) サンスイ・HS5

4 サンスイHS5


              聴感上は周波数特性の低域以上に低音の伸びと量が感じられる。
           高域は伸びてはいないがそれでも高域不足を感じるほどではない。
           今回の小型のOPTの中では重心が低く重厚な音がして最も楽しめた。
           ヤフオクではこのサンスイ・HS5はタンゴやラックスに比べ評価はやや低いが   
           もっと評価されて
良いのではないか。        

          (5) タンゴ・XE-20S

5 タンゴXE-20S

               明らかに上記の小型のOPTより1ランクも2ランクも上の音である。
          明るめの音で周波数のバランスも良く音場も広い。
          実に堂々として充実した音である。
                 こんな小さな出力管の出す音とは思えない。
                 アンプを見なければ大型管の音と思うであろう。
           
           (6) タムラ・F-2007C

6 タムラ F-2007C

           ノグチトランスの特注品で通常のFー2007のE I コアをカットコアに
           変更したOPT。
           低域から高域にかけてのバランスは申し分ない。
                 太めで派手さのない質実剛健と言った感じの音である。
                 いわばNHKの音といった方が良いかも。
                 小さなMT管とは思えぬスケールの大きい音がする
                 やはり小型OPT類とは一線を画す音である。
            
 
P8030003
          
                     タムラ:F-2007Cを使用中         

   5 最後に
    
     7ピンの小型のMT管で出力1W程度にもかかわらず大型のOPTにすると堂々たる音を
     奏でるなど、OPT交換式にすることによってA2134の潜在能力の高さを知ることが
     できた。
     また自分が満足できる小型のOPTは何かを知ることもできた。

     以上はA2134シングルアンプ・三極管結合、無帰還の場合でありアンプが変われば
     各OPTの音の印象は変わるであろう。
     また音の感想は主観的なので話し半分程度にしてご自分でご確認を。

     当方が気に入ったOPTはサンスイHS5で、このOPTを用いた小型のアンプを久々に
     作ってみようと思ってる。


            おわり


  

96 MT出力管 6BM8,6BQ5、A2134の簡易テスト。





   1 初めに

     中古のムラード・ECL82(6BM8)とEL84(6BQ5)を入手し、
     またヤフオクで A2134(CV4062)を購入していたのでこれらを
     試聴してみた。

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   2 各真空管の試聴

     ECL82とA2134は電源とOPTなしの部分だけの製作。
         電源は以前に製作した真空管用電源装置を用いた。

     EL84は昔作った出力管とOPTの交換可能なユニバーサルアンプで
     出力管にはソケット変換アダプターを使用。
        
         尚使用したアンプはすべて三極管結合で無帰還、OPTに山水・HS5を使用した時
     である。

     それぞれ使用しているアンプの回路などが違うので異なる真空管の音の比較
     などはあまり意味がない。
     しかし同種の球の比較は多少は参考になるかも。
    


    (1) ECL82(6BM8) 


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P6110013-2

PB040002



       ・ 回路は木村 哲 氏 (べるけ氏)の発表回路のコピー。
        出力部プレート電流はカソードにLM317Tを用いて定電流としている。

        ・ ナショナル製6BM8使用の時
      
         一聴して感じるのは周波数レンジは広く低域から高域にかけてのバランスが
         とても良いこと。
         また各楽器の音が明瞭であるが艶や潤いなどはなく大変に真面目な音である。           
         一般的にはこれで十分に楽しめる音であろう。
  
     ・  ムラードECL82

              周波数レンジはさほど広くは感じないがかと言って低音・高音に特に不満はない。
         何よりも各楽器の音に適度な太さがあり、さらに音に艶があり倍音の多い
         豊かな充実した音である。
         とにかく各楽器の音が生命力にあふれ音楽全体に躍動感がある。
              コンサートホールでの音を彷彿とさせてくれる楽しい音である。
         6BM8にはクラシックが楽しめる球もあるのかと改めて見直した。
          
                ヒーター電圧が16Vになるがポーランド製のPOLAM PCL82も
                安価ながら結構良い音であった。

    (2) EL84(6BQ5)

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PB040001


                  
       前段は12AX7パラのごく普通のCR結合回路であるが現用機は前段にムラードの
       E180CCを用いている。
        
        ・ ナショナル製 6BQ5

             ナショナルの6BM8と同じでレンジは広く低域から高域までのバランスも良い。
         また各楽器の音が大変明瞭であるが多少バイオリンなどの音がきつくうるさく
         感じることがある。
            全体的に生真面目な音で大きな不満も出ないであろう。

        ・ムラード EL84

        ムラードECL82と同じで中域の充実した鳴りっぷりの良い音であるがこち        
          らの方が各楽器の音の分離が良く明瞭であり多少力強い感じがする。
            そして何よりも倍音が多いのか豊かな音で艶もあり音場の広さを感じさせる。
            ともかく音を聞いているだけで楽しくなる。

    (3) A2134(CV4062)
          
P6110010-2
2

PB040005

              

         回路はA2134で検索し前段に6AK5を用いている回路のコピー。
       試聴に用いたアンプでは前段の6AK5を同等管のWE403Aに交換。
       出力管より前段の方が高価となってしまったが結果はベストであった。

       ・ 音はムラードのようにたっぷりとした鳴り方ではないが、その代わりに一音一音に      
       適度な太さがありくっきりとして躍動感がある
       上記のムラード製と同様に音を聞いているだけで大変楽しめる音であった。

      初段のWE403Aにシールドケースは必要ない。
      IERC製のシールドケースを使ってみたかっただけである。   
      
   3 最後に

             国産であれムラード製であれ音楽を聴くには不都合な球はない。
             しかし国産とムラード製には歴然とした違いがあるのは事実。

       国産(と言ってもナショナル製だけであったが)は何も足さない引かない、ワイドレンジ    
       で忠実に信号を音に替えているようで生真面目な音楽を聴かせてくれる。
       一方のムラードは周波数レンジは国産より狭めであるが出てくる音にはゆとりとか
       艶やかさがありホールでの音楽鑑賞を彷彿とさせる楽しさがある。
       
       もし常日頃聴く音楽がジャズかポップスだけであるなら、
       ワイドレンジでメリハリのある音のする国産の球が好まれるであろう。
       一方聴くジャンルがクラシックに限られるなら味がなく素っ気ない国産の球より
       多少ナローレンジぎみではあるが豊かで艶やかな音のするムラード製が合いそう。            
             
            以上の簡単な試聴ではあったがムラード製のECL82やEL84が高価な理由が
       わかったし一聴の価値はあると思う。

        以上から本来はムラード製の球をベストにしたいが高価で入手難なため
            当方のベストは 前段にWE403Aを用いた A2134とした。           
         価格が安価(1本1200円程度)で7ピンの何とも頼りない球で
         あるが音は予想を大きく裏切ってくれた。大変楽しめる球である。
               次点はポーランド製POLAM PCL82かな・・・・安価だし。

    なお、今回の試聴に用いたOPTはすべて古い山水のHS5で、これはいくつかのOPTを
    比較試聴して選択したものである。
    これについてはいずれ改めて記すこととしたい。 


               おわり








95 出力電圧固定式から可変式へ改造





   前回に出力電圧固定式の励磁電源を作ったがこの励磁電源でフィールドコイルの
   DCRが1200Ωのユニットを常用している。

   ところで手元に同じテレフンケンのセンターダンパー・スピーカーでフィールドコイルの
   DCRが1600Ωのユニットがある。
   1200Ωのユニットの励磁電源は75V位であり、1600Ωのユニットの励磁電源は
   100Vあたりで使用する。

   最近このフィールドコイルのDCRの異なるユニットを交換して試聴することがあった。
   もちろん出力電圧固定の励磁電源を他の励磁電源に交換して使用した。
   励磁電源を交換してみるとやはり出力電圧は可変式の方が便利であることがわかる。
   しかしこの出力電圧固定式の励磁電源に今まで使ってきたスライダックを組み込んで
   出力電圧可変式にするのはスペース的に不可能である。

   そこで大まかな出力電圧変化はロータリースイッチを用い、細かな電圧調整は小型の
   巻線可変抵抗を用いるように改造してみた。

   1 主な追加部品


P1290002



      ・電源トランス・・・西崎電気に特注(6千円位))

             一次 : 0-90-100V
             二次 : 0-110-120-130-140-150-160V・250mA   
               0-6.3V・0.5A

      ・ロータリースイッチ : ラックス製 2段2回路6接点・ショーティングタイプ
      ・巻線可変抵抗器 : 5W・100Ω

   2 各部品の追加説明

      (1) 特注した電源トランスは元々使っていたタンゴのST-130と取り付け
          サイズが全く同じで電源トランスの交換は簡単であった。
    
      (2) ロータリースイッチは必ずショーティングタイプを用いること。
          ノンショーティングタイプを用いるとスイッチの切り替えの時に高圧の
          逆起電力が生じ放電=火花が飛ぶ。
          フィールドコイルを壊すことはないが精神衛生上よろしくない。

      (3)100Ωの巻線可変抵抗器で最大約10V近くの電圧を下げることができる。
         巻線可変抵抗器での消費電力は1W位で大きくても1.5W以下である。
         今回使用する5Wの巻線可変抵抗器での発熱を確認してみたがわずかに
         暖かく感じる程度で特に高温になることはなかった。


   3 回路

LA FONTINE_000015-2

   4 完成

         追加部品の部分


P2020007


         外観


P2040009


   5  改造してみて

          やはり出力電圧が変化できると便利である。
      出力電圧の変化にはスライダックを用いる方式が簡単であるが小型のパネル取り付け用の
      スライダックの入手やコストを考えると今回のロータリースイッチと
巻線可変抵抗器を
      用いる方式が遙かに簡便である。 

        出力電圧の変化は下記のようになった。
        いずれも電源トランスの二次側の電圧を最小の110Vと最大の160Vにした時で
      巻線可変抵抗器による電圧降下は0の場合である。

       シーメンス・セレン整流器を用いた場合
              負荷として普通はフィールドコイルになるが電圧のテストのため
         メタルクラッド抵抗を用いた。
        
             電源トランス一次の100V端子を用いた時
                負荷    1.0kΩの時   出力電圧:64V~99V
                負荷  1.5kΩの時   出力電圧:69V~106V 

               電源トランス一次の90V端子を用いた時(90V端子に100Vをかけた時)
                 負荷 1.0kΩの時   出力電圧:75~114V
                 負荷 1.5kΩの時   出力電圧:77~121V

          上記のように負荷=フィールドコイルのDCRによって出力電圧が変わるがこれらの
     出力電圧の範囲であればほとんどのドイツのフィールドタイプの
スピーカーに
     対応できるであろう。
          
      シーメンスのセレン整流器が入手不可の場合はSiCショットキーバリアダイオード
        を推奨するがその場合の出力電圧の変化は下記のようになった。
       
      SiC ショットキーバリアダイオードを用いた場合

           電源トランス一次の100V端子を用いた時
                   負荷  1.0kΩの時   出力電圧:88V~124V
                   (巻線可変抵抗器による電圧降下は0の場合)

     上記のようにSiCショットキーバリアダイオードを用いるとセレン整流器の場合
     より25V前後の高い出力電圧になる。
     従ってSiCショットキーバリアダイオードを用いるときには電源トランスの二次側
     の電圧設定を考慮する必要がある。

         下記はセレン整流器やSiCショットキーバリアダイオードの使用を考えたときの
      特注電源トランスの例。
          
              一次 : 0-90-100-110V
              二次 : 0-90-100-110-120-130ー140
                   -150-160-170V・300mA
                 6.3V・0.5A・・(デジタルメーター電源やLED用に)

           実際に上記の内容で特注した電源トランス


IMG_0949-2
        
                       
           特注先は西崎電機で約6千円以内・納期は原則5日以内。
           早い・安い・うまい、・・・どこかで聞いたような!

            このトランスの場合ブリッジ整流するので取り出せる電流は片チャンネル
       あたり100mA弱である。

    実際の電源トランスの使用法は
 
          ・  ロータリースイッチ(ショーティングタイプ)を入手した場合
        接点数に応じて電圧の範囲を選択して使用。
        (必ずしも90V~170Vまですべてを切り替える必要はない)

           ・ ロータリースイッチの入手が不可の場合
        上記の電圧の中から必要とする出力電圧が得られるおおよその電圧を選択
        して接続する。          

         上記のいずれも電圧の微調整には5W以上・100Ω以内の固定抵抗か
     少なくとも5Wで・100Ω位の巻線可変抵抗器を用いて8~10V以内
     で電圧を微調整する。
 
      
       以上は言うまでもないが当方のシステムでの話である。
       使用するスピーカーやチョークコイルなどが変われば電圧なども変わってくるので
     それらを考慮する必要がある。



                   終


          追記 (2023年3月)

                       上記のケース・リードLC-3を用いた励磁電源を再度製作した。
                    今回はサブシャーシを作らなくとも済む簡単な方法である。
      
                    ケース・リードLC-3 の底板には放熱用(?)のスリットが開けてある。
                    そこでこのスリットを利用して電源トランスはL型のアルミ板で取り付ける。
                    チョークコイルは幅15mmほどの2枚のアルミ板に取り付けそれを2cmの
                    スペーサーでチョークコイルの端子が底板に触れないように浮かして取り付ける。
                    コンデンサーは端子が上になるように取り付ける。
 
                    以上のようにすれば苦労してサブシャーシを作らなくとも、ケースの底板には何ら
            加工せずに細長いスリットを利用して電源トランス、チョークコイル、コンデンサーの                     
           主な部品類を取り付けることができる。

                    それ以外は前回と同じである。

IMG_0963-1
P3260001
P3260007









   

94 出力電圧固定式・励磁電源の製作(セレン整流器使用)





    今回は出力電圧固定式の励磁電源である。多分これが最後?

    使用スピーカーはテレフンケン・センターダンパー8インチのフィールド・スピーカー。
      タンノイもウエスタン系(アルテック製)も処分し現在はこのユニットだけを常用している。
    したがって励磁電源の出力電圧を可変式にする必要がなくなったので今回の製作となった。

    フィールドコイルの直流抵抗は1200オームなのでコイルの電力を6Wと仮定すると
    計算上の必要電圧は約85Vになる。
    安全を見込んで目標とする出力電圧は75V前後とした。 
           
1
        

    1 回路 ・・・メインアンプの電源部より簡単な回路。これだけで音は特に不満がない。                       
2
    2 主な使用部品類
                 
3

         電源トランス・・・タンゴ・ST-130
            チョークコイル・・・タムラ・A4003(5H・250mA)
            コンデンサー・・・シズキ・55μF・AC250V
            セレン整流器・・・シーメンス:250V・150mA
            デジタル式電圧計・・・DC5~120V (Amazonより)
            ケース・・・リードLC-3
            その他・・・キャノンコネクター(3P)、ACインレット、スイッチ、
                          フューズ3A&0.1A、フューズホルダー等

       部品補足説明

     (1)   電源トランス:タンゴのST-130は倍電圧整流用電源トランスで二次は
                 0-7.5-105ー120ー135V。
                 ヒーター用に6.3Vが2回路ある。
                           ヒーター回路を直列にすると最大電圧は147.6Vになる。
                           現在7.5V端子と135V端子間の127.5Vを使用し
                  出力電圧は約73Vになっている。
                    
                            出力電圧は使用するチョークやスピーカーによって変わるので
                  あらかじめ確認する必要がある。
                           電流の130mAは倍電圧整流した時でブリッジ整流すると
                  電流は2倍取り出せるので十分である。
                    
                           今回使用したタンゴST-130以外にもタンゴのST-230や
                   サンスイのPV-145とかPVー180、
ラックスにも
                   倍電圧整流用のトランスが有り流用できる。
                           また西崎電機であれば6千円前後で特注できる。
                                 特注例  一次:0-90ー100ー110V
                                           二次:0-110-120-130-140-150             
                                   -160V・300mA
                                                   6.3V・0.5A

                          電圧の微調整がしたければ10W・100Ω以下のセメント抵抗か
                    巻き線抵抗器を使用
 
         (2)チョークコイル

                        チョークコイルのインダクタンスは5Hがベストであるが5Hであれば何でも
              よいわけではない。 
              以下のように手持ちの5Hのチョークコイルをいくつかテストしてみた。
                                                   
4
 
                          この結果小型のチョークコイルはレンジが狭く音も痩せぎみである。
             大型のチョークコイルほど良い結果が得られた。
                        このテスト後にゴールドに再塗装されたタムラA4003を入手したので使用。

                      チョークコイルはインダクタンスが5H位で
コアボリュームの大きい物を使用したい。
                   具体的にはラックスであれば4705,タムラであればA4003やA-396あたりでこれより
              小型のチョークコイルは避けた方がよい(タンゴは持ち合わせがなく不明)。

         (3)セレン整流器・・・シーメンスのセレン整流器はeBayで見かけるが
                    送料込みで5千円~。
                              セレン以外であればSiCショットキーバリアダイオード
                    (SiC SBD)を推奨。この場合は出力電圧が
                   20V~高くなる。
                      
       (4)デジタル式電圧計・・・電圧計は一応出力電圧確認のために使用した。
                        アナログ式電圧計でも良いし電圧計無しても困らない。
                                     今回使用のデジタル式電圧計はAmazonで購入の
                                     DC5~120Vの電圧計で2線式のため特別の
                                     電源は必要なくアナログ式電圧計と同じ使用法。

         (5)ケース ・・  リードLC-3はトランス類を取り付けるサブシャーシがない
                 ので自作せざるを得ない(これが結構面倒であった)。
                            同じリードのLK-3は高価になるが最初からサブシャーシが
                 あるので使い易い。
                また、ボンネット付きのシャーシや外観を気にしなければ
                弁当箱シャーシなどは製作が容易になる。
                           
5


    3 完成

          (1)外観
                        
6

                 左:前回製作の出力電圧可変式励磁電源 (使用ケース:リードLK-3)
                 右:今回製作の出力電圧固定式励磁電源 (使用ケース:リードLC-3)

          (2)内部上面
                
7
                  
           (3)内部底面
                  
8


           (4)使用中
                  
9


    4 最後に

            今回でセレン整流器を用いた励磁電源の製作は一応最後とする。
            セレンを用いて製作した3台の励磁電源は基本的には同じ内容なので音質の違いはない。
          新たに大きな音質向上の事実が判明すれば再度挑戦したい。    



                  以上・お粗末でした・・・・・・・おわり


                      追記 次の95でこの励磁電源を可変式に改造したのでご覧ください。
                                    










       

93 またまた励磁電源の製作





       前回の実験(当ブログ 92)でチョークインプットで用いるチョークコイルの
      インダクタンスが5H位の小さい方が良い結果が得られることがわかった。
      この結果から以前に作ったセレンを用いた励磁電源のチョークコイルを10Hの物から
      5Hのチョークに換装した。結果は実験の通りで大変満足できるものになった。

      以前に作ったセレンを用いた励磁電源は平滑回路が2段であったが平滑回路1段でも
      全く問題がない事がわかっている。。
      平滑回路が1段で済めば更に小型の励磁電源が作れる事になるので改めて
      平滑回路1段の励磁電源を作ることにした。

      1 主な使用部品類
      
     
PA200007
     
      
          ・電源トランス・・・160V・200mA
                  (西崎電機に特注・6000円位・納期5日)
             ・小型電源トランス・4~8V・0.5A(デジタル式電圧電流計の電源用)  
             ・パネル取付用小型スライダック 100V・0.5A (ヤフオクで)
             ・チョークコイル・・タムラ MC-5H(5H・200mA)
                          チョークインプット用(ヤフオク)
             ・コンデンサー・・シズキ 55μF・250VAC (ヤフオク)
             ・セレン整流器…シーメンス・250V・250mA   (eBay)
                 ・デジタル式電圧・電流計・・・200V・10A(4ケタ表示)(eBay)
             ・ケース・・・LEAD・LK-3
       
      2 完成
       
         (1)外観
 
            
PB010004

                  左:以前に製作した平滑回路2段の励磁電源 
                    右:今回製作した平滑回路1段の励磁電源  
                    
         今回製作した励磁電源はケースの大きさがあまり小さくなったとはいえないが
         重さは以前の電源が11kgであったのに対し今回の電源は7kgであった。
         励磁電源はそう頻繁に移動させることはないが小さく軽くなったことで
         取り回しが楽である。

          (2)内部上面

       
PB010001



      (3)内部下面      回路も配線も普通のメインアンプの電源部より簡単である。


PB010002


      3 使用中

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      4 最後に

          励磁電源では水銀整流管83を用いた回路がベストと思っていたが、
       セレン整流器を用いた回路でもチョークコイルのインダクタンスを小さくすれば
       十分実用になる。
       そして何よりもセレン整流器を用いると水銀整流管83を用いた時に比べ
       回路も製作も遥かに簡単である。

       また音が出てくるまでの時間が83の時は約2分ほどかかったがセレンであれば
       メインアンプの真空管が動作するまでの短い時間で済む。

       水銀整流管83とセレン整流器とでの音の違いはある。どちらが優位とはいえず
       好みの問題になろう。当方はセレン整流器を用いた励磁電源でも十分楽しめる。

         これまで製作してきた励磁電源はできるだけ多くのフィールド・スピーカーに対応
       できるように出力電圧を可変式にしたが、現在当方はテレフンケンの
       センターダンパーのユニットしか使用しない。
       従って使用電圧はほぼ70V位に固定したままである。

       もし励磁電源の出力電圧を可変式でなく固定式にすれば励磁電源はもっと簡単になる。
       そこで次回は出力電圧固定式の励磁電源を作ってみたい。



                             了









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92 また励磁電源の実験・・・意外な結果が!





     ネットを見ているとSiC SBDの評判がよいようである。 

     SiC SBD とはSiC ショットキーバリアダイオード、
     長く書けばシリコンカーバイド・ショットキーバリアダイオード。

     整流素子をSiC SBDに変えるとオーディオ機器の音がよくなるという。
     ある方は「もうプリやメインアンプに整流管を使う必要はない」とまでおっしゃっている。
                 
     オーディオ機器の整流にSiC SBDを用いると音質が良くなると聞いて、
     では励磁電源に用いたらどうなるのだろうか気になっていたので実験してみた。

     用いたSiC SBDは秋月電子で扱っているパンジット・PCDP05120G1(台湾製)で     
     1個・200円の品である。

1-1


      使用した回路は当ブログの「91 励磁電源・・・ささやかなまとめ」の中の
      「2 セレンを用いた励磁電源」の回路と同じ(使用部品は多少異なる)                          
     

     (1) SiC SBDを4個組み合わせてブリッジ整流にした時。
                               
2-1


        音は低域は締まっているが量感はあまりない。
        中域は明瞭であるが硬くはない。
        高域はのびや繊細さが不足ぎみでツィータを足したくなる。

        高域に不満はあるが全体にレンジもほどよく広くフィールド・スピーカーの良さは
        味わえる。

     (2) 一般的なブリッジダイオードを用いた時。


3-1


        音は残念ながら奥行きが感じられず平面的、荒さがありうるさい感じになる。
      
      
     (3) SiC SBDを2個だけ使って両波整流とした時

4-1

                          
        音はブリッジ整流とは明らかに異なる音である。
           低域から中域にかけてブリッジほど明瞭ではないがその代わりたっぷりとした
        量感がある。
           高域は良く伸びており繊細さもあるが水銀整流管83には及ばない。
            全体に明るく華やかであるが決してうるさくはない。


     (4) ごく一般的なショットキーバリアダイオードを2個使って両波整流とした時。

4-2

                                
        音は周波数レンジが狭く高域の繊細さはない。
        音の響く空間が狭くさらに音の分離が悪く団子状の感じになる。


      以上の実験からSiC SBDを2個使った両波整流が一番よかったが強いて使ってみたいと
      思うほどではなかった。




      番外編

      セレン整流器を使用した時にチョークコイルとコンデンサが各1個の平滑回路1段の
      励磁電源でも実用になることは実験済みであったが、もしチョークコイルの
      インダクタンスを変えてみたらどうなるか気になったので実験してみた。

      整流素子は
SiC SBD の他にシーメンスのセレン整流器も使用してみた。
      コンデンサーは20μFではごくかすかにハム音が聞こえるが40μF以上であれば
      ハム音はほぼ聞こえなくなった。

     1 SiC SBD とシーメンスのセレン整流器をいずれも両波整流として使用。

       実験1 インダクタンスを大きくしたとき。

           最初に使用したチョークコイルはタンゴCH12-200Dという
           インダクタンスが12Hのチョークインプット用のチョークである。
           音は以前の実験と同じで
セレン整流器だけでなくSiC SBD でも
           高域の伸びや繊細さが不足する音であった。
           
           次にインダクタンスが20Hのチョークインプット用の
           チョークコイル・タンゴCH20-150Dに交換。

         結果はインダクタンスが大きくなっても音がほとんど変わりがなかった。
         インダクタンスを大きくしてもあまり意味がなさそうである。

       実験2 インダクタンスを小さくしたとき。

                 インダクタンスが5HのタムラMC-5H(5H・200mA)という
           チョークインプット
チョークコイルがあったのであまり
           期待もせず使ってみた。

4-3
                   
シーメンス・セレン整流器での両波整流
                   写真上部に半分ほど写っているのが
タムラMC-5H

         結果は予想外であった。
 
             SiC SBD とセレン整流器共に
         周波数レンジが広く中・低域はたっぷりとした響きで83の幾分やせ気味
         な音とは異なる。
         高域は83に劣らず伸びと繊細さがある。
         83がダントツの音と思っていたが今回の実験の結果でSiC SBDとセレンが
         83の代わりに
使えそうである。
         83は音が出るまで約2分ほど待たなければならなかったが、
         
SiC SBDとセレン整流器を使えばそんなこともないのは利点である。

       実験3 手持ちのインダクタンスが5Hあたりのチョークを探したところ
           タムラA-396、LUXの5BC5とUTCのS-29(6H)が
           あったので交換してみた。
           
                タムラ A-396(5H・200mA)はMCー5Hに近いが少し
             スケールが小さくなる感じがする。
            LUX・5BC5は音が柔らかく明瞭度が落ちる。
            UTC・S-29は音が少し細くなり中低域の量感が足りない。
         
         インダクタンスが5Hのチョークコイルであれば何でも良いわけでは
         なさそうである。
         タムラのチョークインプット用のMC-5Hがベストであった。
              タムラのA-396も代替品として使えそうである。
     
     2  SiC SBD とシーメンスのセレン整流器をいずれもブリッジ整流で使用。

        結果はインダクタンスを5Hにした時の
両波整流と同じで良い音がした。
        インダクタンスが小さい時は両波整流でもブリッジ整流でも変わりはなく
        よい音が得られる。

       3 最初に使っていた一般的なショットキーバリアダイオードによる両波整流と
       ブリッジダイオードを使ってみたところ思ったほど悪くない。
       しかし
 SiC SBD の方がワイドレンジかつ音がなめらかで明らかに良い音である。
       ショットキーバリアダイオードやブリッジダイオードを使用したときは
       わずかに周波数レンジが
狭く音が細めで荒さがある。

       励磁電源をとりあえず使用してみたいときなどは一般的な整流素子で
       試みるのもよいであろう。
       よい音で楽しみたくなったら
SiC SBDに交換することは容易である。  

      
   結論                     

     励磁電源に用いるチョークコイルはインダクタンスが5H位の小さい方が良い結果が
     得られる。しかしチョークコイルは5Hくらいなら何でも良い訳ではなく選ぶ必要がある。
     今回はチョークインプット用のチョークコイルで良い結果が得られたが他の可能性が
     有るかもしれない。

     タムラMC-5H(5Hのチョークインプット・チョーク)、コンデンサ40μF使用
     の時、
SiC SBD とシーメンスのセレン整流器は両波整流でもブリッジ整流でも
     よい音が得られたが、
     強いていえばボーカルなどで SiC SBDはサ行が少し耳につく、セレンの方はそのあたりが   
     ソフトで全体の印象はセレンの方が落ち着いた感じの音である。

     ポップス・ジャズ系の音楽には多少メリハリのある音のするSiC SBDの方が
     向きそうである。
     当方はクラシックがメインなので断然セレン整流器の方が好みである。
       なお 
SiC SBD は発熱しないので放熱の必要はないがセレンはシャーシーに固定して
     軽く放熱した方が良い。
     

 
      今回の実験では蛇足のつもりで期待もせずに行った最後の実験で大収穫が得られた。
      チョークコイルのインダクタンスは大きい方が電圧変化の少ない直流が得られるので
      良いと思っていたら、マサカヤーであった。


      さて今回はチョークコイルの違いで音が結構異なった。
      励磁電源を制作する場合はあらかじめ5~10Hのチョークコイルの音を
      確かめておく必要がある。

      励磁電源では音の変化する要素がまだまだあるだろうから他の方の情報をお待ちしたい。



                      終
 

    追記 (11月12日・土)

      上記の実験ではチョークコイルのインダクタンスを5Hにしたところで終わった。
      その後インダクタンスを更に小さくしてみた。

      タムラやラックスのチョークコイルにはコイルが2分割されていてこれを並列接続すれば
      インダクタンスを4分の1の小さな値にできる。

      そこで手持ちの下記のチョークコイルを並列接続にしてみた。
      タムラA4004はインダクタンスが2.5Hに、 
      タムラA4003はインダクタンスが1.25Hになりこれで実験した。

      結果は音が下記のように変わった。
       2.5Hの時は低音部は少し弱くなるが全帯域でクリアーな音になる。
       1.25Hの時は更に低域が弱くなり高域がうるさく感じる。      

      以上の実験から結論として、一般的には低音から高音にかけてバランスの良い5Hの時が    
      ベストのようである。しかし小編成や声楽ではクリアーな音のする2.5Hも捨てがたく    
      こちらも選択肢として残しておきたい。

      なお回路はチョークインプット式であるがコンデンサーインプット用のチョークコイルも  
      使っていて特に問題を感じないがあくまでも自己責任で!
      バンド型の小型のチョークコイル等は低域が貧弱になるので避けた方がよさそうである。

      以上は当方のシステムでの話であって他のシステムでも同じ結果が得られかは
      保証できない。
      励磁電源を製作する際はバラックテストで音を確認してからが望ましい。


                                    以上







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